ガス溶接の逆火とは:原因、安全器のしくみ、起きたときの順番

この記事には広告を含みます。広告のリンクには「広告」と書いています。

作業台に置いた切断用の吹管と青と赤のホース

逆火が起きるしくみ

火口からは、酸素と燃料ガスを混ぜたガスが出ています。炎がガスを燃やしながら戻ろうとする速さが燃焼速度、ガスが火口から出ていく速さが噴出速度です。この2つのつり合いで炎の位置が決まります。

噴出速度と燃焼速度がつり合うと炎は安定し、噴出が速すぎると炎が離れて消え、燃焼が速すぎると炎が中へ戻る図
炎の速さのつり合い。速さの実際の値ではなく大小の関係を示す

燃焼が勝つと炎は中へ戻り、噴出が勝ちすぎると炎は離れて消えます(ブローアウト)。

逆火の原因

補助教材は次の原因を挙げています。

  • 火口の温度の上昇、流量の不足、混合の割合の変化で、燃焼速度がガスの流れより速くなった
  • 火口の先が母材に触れたり、スパッタで詰まったりして塞がれた
  • LPG 用の火口をアセチレンで使った
  • パージの不足や空気の漏れで、燃料ガスのホースの中に空気があった
  • 酸素ホースの中に金属の粉や、以前の逆火の煤が付いていた

アセチレンはプロパンより燃焼速度が速いガスです。そのため火口はガスごとに作りが違い、アセチレンを別のガスの火口で使うと逆火が起きて危険です。

起きたときに閉じる順番

補助教材は、作業中に逆火を起こしたときの順番を次のように示しています。

  1. 予熱酸素のバルブをただちに閉じる
  2. 燃料ガスのバルブを閉じる
  3. 切断酸素のバルブを閉じる
  4. 酸素と燃料ガスの容器弁を閉じる
  5. 圧力調整ハンドルを緩める

ふだんの切断の消火とは順番が違います。ふだんは切断酸素から閉じますが、逆火のときは予熱酸素からです。

点火、溶接の消火、切断の消火、逆火のときのバルブの順番を並べた図
逆火のときの順番は下の段

再開の前に

原因が分からないまま再開してはいけません。火口の清掃と締め直し、ガス漏れの確認などを行い、原因を特定して対策をとります。

安全器の役割

安全器は、戻ってくる炎を止める器具です。今は乾式安全器(逆火防止器)が広く使われ、圧力調整器に組み込まれた型もあります。補助教材は、可燃性ガスの圧力調整器に乾式安全器が付いていないときは、ホース側に取り付けるよう説明しています。

酸素の容器とアセチレンの容器から圧力調整器、乾式安全器、ホースを通って吹管と火口につながる図
安全器の位置の例。機器の構成によって違う。図では酸素側の安全器を省略している。

法令の決まり

安全器の設置を直接定めた条文は、次の2つの設備についてのものです。

設備 条文 内容
アセチレン溶接装置 第306条 吹管ごとに安全器を備える。主管と、吹管に最も近い分岐管ごとに備える方法もある
ガス集合溶接装置 第310条第2号 主管と分岐管に設け、一の吹管について安全器が2つ以上になるようにする

また一般高圧ガス保安規則第60条第1項第13号は、溶接や熱切断用のアセチレンガスの消費は、逆火、漏えい、爆発などによる災害を防ぐ措置を講じて行うと定めています。

安全器があっても

安全器が働いても、そこまでの吹管とホースの中には炎が進みます。機器が傷み、中に煤が付き、あとで燃えることもあります。補助教材は、音速を超える「デトネーション」でホースが破裂するおそれや、安全器が働かなければ容器まで炎が戻るおそれにも触れています。

逆火を防ぐために

  • 作業前にホースの中の空気を出す(パージ)
  • 火口の先を清掃し、確実に締める
  • 火口を母材にぶつけない
  • 長く続けて加熱して、火口を熱くしすぎない
  • ガスに合った火口を使う
  • 一度逆火したホースは点検する。煤が付くと再び逆火したときに激しく燃える

点検の項目は吹管と圧力調整器にまとめています。

まとめ

  • 逆火は炎が吹管やホースの中へ戻る現象
  • 原因は燃焼速度とガスの流れの関係、詰まり、空気の混入など
  • 閉じる順番は予熱酸素、燃料ガス、切断酸素、容器弁
  • 安全器があっても、繰り返すと機器が傷む
  • 原因が分かるまで再開しない

よくある質問

逆火とは何ですか?
炎が溶接器やホースの内部へ戻り、中の可燃性ガスが燃える現象です。フラッシュバックとも呼ばれます。
逆火を起こしたらどのバルブから閉じますか?
補助教材では、ただちに予熱酸素バルブを閉じ、続いて燃料ガスバルブ、最後に切断酸素バルブを閉じます。そのあと容器弁を閉じ、圧力調整ハンドルを緩めます。
安全器を付けていれば安心ですか?
いいえ。安全器が働いても、そこまでの吹管とホースには逆火が進みます。繰り返すとホースの内部が傷み、破裂することがあります。
逆火のあとすぐ作業を再開できますか?
原因を特定して対策をとるまで再開してはいけません。